2025年12月1日月曜日

「値上げ反対!だから払わない」は通用する?マンション総会決議の効力とは

 「管理費等の値上げが総会で可決されたけれど、私は反対票を投じた。納得がいかないから、値上げ分は支払わない!」 「大規模修繕の内容が気に入らないから、積立金の増額には応じない」

修繕積立金や管理費の改定時、このような主張を耳にすることがあります。自分のお金に関わることですから、納得できない支出に抵抗を感じるのは当然の心理かもしれません。しかし、分譲マンションという共同住宅のルール(区分所有法)において、この主張は果たして認められるのでしょうか?

結論から言うと、「総会で適正に決まった以上、反対した人も含めて全員に支払う義務」があります。

個人の「納得」よりも優先されるルールとは何か。今回は、なぜ「納得できなくても支払わなければならないのか」、その法的な理由と、支払いを拒否し続けた場合の深刻なリスクについて詳しく解説します。

1. 総会の決定は「絶対」のルール

マンションの管理費や修繕積立金は、建物の老朽化対策や物価上昇、管理サービスの維持など、様々な理由で値上げが必要になることがあります。

この値上げは、理事会の一存で決まるわけではありません。通常、管理組合の最高の意思決定機関である「総会」において、総議決権の(2026年4月から出席者多数決)の過半数などの賛成(普通決議)によって民主的に決定されます。

ここで最も重要なのが、「総会の決議の効力」です。

法律上、適正な手続き(招集通知の発送、定足数の確保など)を経て総会で可決された事項は、そのマンションにおける「法律」のような強力な拘束力を持ちます。この効力は、決議の結果に対して以下のような立場の人たち全員に及びます。

  • 賛成した人

  • 反対した人

  • 総会に出席しなかった(議決権を行使しなかった)人

  • 決議後に新しく入居した人(中古物件の購入者など)

つまり、マンション管理は民主主義の原則である「多数決」で運営されており、一度可決されれば、「私は反対だったから従わない」「その場にいなかったから関係ない」という理屈は一切通用しません。これは、多くの人が一つの建物を共有して暮らすために不可欠なルールなのです。

2. 「払わない」を続けるとどうなる?

「それでも納得できないから、従来の金額しか払わない」と差額の滞納を続けるとどうなるのでしょうか。単なる「抗議」のつもりでも、法的にはご自身にとって非常に不利な状況を招きます。

適正に決議された管理費等を支払わないことは、管理組合に対する「債務不履行(借金を返さないのと同じ状態)」となります。

管理組合は、他の善良な区分所有者の利益を守るために、断固とした措置を取らざるを得ません。最悪の場合、以下のような厳しい対応が待っています。

  • 遅延損害金の発生: 多くの管理規約では、滞納金に対して年利数〜10%程度の遅延損害金が加算される定めになっています。時間が経てば経つほど、支払うべき金額は雪だるま式に増えていきます。

  • 法的請求(訴訟): 督促に応じない場合、支払督促や少額訴訟などの法的手続きが行われます。裁判になれば、適正な総会決議がある以上、滞納者側が勝つことは極めて困難です。さらに、弁護士費用などの違約金が請求されるケースもあります。

  • 財産の差し押さえ(先取特権・競売): 区分所有法に基づき、管理組合は滞納者の財産(家具、家電、預金、給与など)や、最悪の場合はマンションの部屋そのものを差し押さえ、競売にかける権利を持っています。

「たかが数千円、数万円の値上げ」と考えて意地を張っているうちに、大切な資産や社会的信用を失うリスクすらあるのです。

3. まとめ:ルールを守ってこそ言いたいことが言える

総会で決まったことには、たとえ個人的に反対意見を持っていたとしても従う義務が生じます。これは、共同生活の秩序を守り、マンションの資産価値を維持するための最低限のルールです。支払いを拒否することは、管理組合の資金不足を招き、結果として自分自身の住まいの首を絞めることにもなりかねません。

もし、どうしても管理費の使い方や将来の計画に納得がいかない場合は、支払いをボイコットするのではなく、次のような建設的な行動が必要です。

  • 理事会や総会に出席して意見を述べる: 議事録に残る形で懸念点を指摘し、他の区分所有者に訴えかけましょう。

  • 次回の総会に向けて対案を出す: ただ反対するだけでなく、「ここを削れば値上げ幅を抑えられる」といった具体的な対案を作成し、仲間を集めて提案しましょう。

「決まったことには従う」。まずはこのルールを守り、義務を果たした上で、より良いマンション管理について議論していく姿勢こそが、あなたの意見に説得力を持たせる第一歩です。

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