マンション管理組合の理事や役員の皆様、日々の管理業務お疲れ様です。
最近、居住者名簿や区分所有者名簿の更新に際して、住民の方からこのような反応をされることはありませんか?
「個人情報保護法があるから、個人情報は出したくない」
「プライバシーの侵害ではないか?」
昨今のコンプライアンス意識の高まりを受け、こうした相談が急増しています。しかし、管理組合として名簿がない状態を放置すれば、緊急時の対応や総会の運営に大きな支障が出ます。
今回は、法改正により管理組合も「個人情報取扱事業者」となった現在の状況を踏まえ、名簿提出を拒否された際の正しい対処法と説得のポイントを解説します。
1. 「個人情報保護法」の誤解を解く
まず、住民の方が最も懸念と誤解をしている「法律」についてです。
かつては「保有する個人情報が5,000人分以下の事業者は対象外」というルールがありましたが、法改正によりこの人数要件は撤廃されました。つまり、現在は小規模なマンション管理組合であっても「個人情報取扱事業者」として法律が適用されます。
ここで重要なのは、「個人情報取扱事業者になった=名簿を作ってはいけない」ではないということです。
法律が求めているのは「情報を集めるな」ということではなく、「ルールを守って適正に扱いなさい」ということです。具体的には以下の義務を守れば、名簿を作成することに法的な問題はありません。
利用目的を特定し、伝える: 「何に使うか」をはっきりさせる。
目的の範囲内でのみ使う: 目的外の使用をしない。
安全に管理する: 鍵のかかる場所で保管するなど、漏洩対策をする。
第三者に提供しない: 本人の同意なく他人に教えない。
住民の方には、「法律で禁止されているわけではなく、むしろ法律に則って厳格に管理するために、正式な届け出をお願いしています」と説明することが第一歩です。
2. 管理規約上の「義務」であることを伝える
次に強力な根拠となるのが、マンションの「管理規約」です。
国土交通省の「標準管理規約」に準拠している多くのマンションでは、届出は任意ではなく「義務」となっています。
新たに購入した時: 直ちに組合に届け出なければなりません。
賃貸に出す時(居住者が変わる時): 区分所有者は、賃借人にルールを守らせる誓約書を提出させるとともに、組合への届出が必要です。
「お願い」ベースで話すと断られやすいですが、管理規約の該当条文(「届出義務」の項など)を示し、「マンションを購入・居住された時点で、規約により提出が義務付けられています」と毅然と伝えることが重要です。
3. 「なぜ名簿が必要か」を具体例で説得する
単に「ルールだから」と言うだけでなく、「名簿がないと、あなた自身が困るのです」というメリット(リスク回避)を具体的に説明しましょう。
緊急災害時の対応: 地震や火災の際、安否確認や逃げ遅れの救助に名簿は不可欠です。特に高齢者などの要援護者の把握は命に関わります。
水漏れ事故への対応: 上階から水漏れが起きた際、連絡先がわからないと水が止まらず、被害が拡大してしまいます。加害者側になった場合、賠償額が増えるリスクもあります。
総会の招集: 現住所が不明だと総会の案内が届かず、大切な資産の決定に参加する権利(議決権)を行使できなくなります。
4. 「配布する名簿」と「保管する名簿」を分ける提案
それでも「他の住民に自分の連絡先を知られるのは嫌だ」という拒否感は根強いものです。
その場合は、「配るもの」と「管理するもの」を明確に分ける運用が効果的です。
全戸配布用(または閲覧用):
氏名・住所のみ(これらは法務局で誰でも閲覧できる登記情報であるため、公知の情報として扱いやすい)。
電話番号や勤務先など、プライバシー性の高い情報は掲載しない。
管理組合保管用(緊急連絡用):
電話番号や緊急連絡先を含む詳細な名簿。
「理事長と防火管理者のみが閲覧でき施錠保管する」「生命に係る緊急時や災害時以外は使用しない」と厳格な管理ルール(個人情報取扱細則)を作って約束する。
このように「あなたの電話番号が他の住民に知れ渡ることはありません」と保証することで、安心してもらえるケースが多くあります。
5. どうしても拒否された場合の最終手段
粘り強く説得しても提出を拒否される場合、区分所有者(オーナー)の情報だけであれば、法務局で不動産登記簿を閲覧することで、現在の所有者の氏名と住所を確認することが可能です。これに本人の同意は不要です。
ただし、登記簿では「電話番号」や「実際に住んでいる賃借人の情報」までは分かりません。やはり、「緊急時に連絡がつかないことで一番困るのは居住者ご自身ですよ」と、地道に対話を続けることが最も重要です。
まとめ
「個人情報保護法」は、名簿作成を拒否する盾にはなりません。
管理組合側がやるべきことは、以下の3点です。
利用目的を明示する(「緊急連絡、総会招集、管理費請求のみに使用します」など)。
安全管理措置を講じる(施錠管理、アクセス権限の限定)。
第三者提供の制限を約束する(本人の同意なく業者や他人に教えない)。
「当管理組合は法律を遵守し、あなたの情報を守ります」という姿勢を示すことで、信頼関係を築き、名簿の整備を進めていきましょう。
------
「管理組合の運営がよくわからない」「自分のマンションの資産価値が不安だ」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
あなたの資産を、法務と実務の両面からバックアップいたします。
0 件のコメント:
コメントを投稿