マンション管理規約の改正により、「行方不明のオーナーに代わって、裁判所が選んだ管理人に部屋を管理してもらう」という新制度が注目されています。
しかし、所在等不明区分所有者に関連する条文を管理規約に書いておきさえすれば万事解決!!とはなりません。
この制度を利用するには、管理組合が「あの人は本当に行方不明です」と裁判所に認めてもらうための、壮絶な準備作業が必要になります。
先行して2023年からスタートしている「民法の所有者不明建物管理制度」の事例から、その大変さの正体を解き明かします。
1. 裁判所が求める「探索を尽くした」という証拠
裁判所は、個人の財産権を守る場所です。単に「手紙が返ってきた」「何年も姿を見ない」という程度では、管理人の選任を認めてくれません。管理組合は、以下の「4つの壁」を乗り越える必要があります。
① 書類調査の壁(戸籍と住民票の数珠つなぎ) 登記簿上の住所から現在の場所まで、住民票や「戸籍の附票」を一枚ずつ辿らなければなりません。もし本人が亡くなっていれば、出生から死亡までのすべての戸籍を取得し、相続人を家系図レベルで特定する作業が求められます。
② 「不在」を証明する壁 「そこに住んでいないこと」を客観的に示すため、特定記録郵便などが「あて所に尋ね当たりません」という付せん付きで返送されてきた封筒のコピーなどが証拠として必要になります。
③ 現地調査の壁 「実際に現地へ行ったが、もぬけの殻だった」という事実を報告書にまとめます。
郵便受けにチラシが溢れている写真
電気・ガスメーターが止まっている写真
隣人への「最後に見たのはいつか」という聞き取り記録
④ 予納金の壁 これが実務上の大きな負担です。裁判所へ納める「予納金(管理人への報酬)」として、管理組合が最初に20万〜50万円程度を負担しなければならないケースが一般的です。
2. 民法での実例:ニーズは高いが準備は過酷
民法の制度では、開始後の申し立ての約87%が「所有者不明型」であり、社会的なニーズは非常に高いことが証明されています。しかし、同時に「立証が不十分」として受理されない、あるいは追加調査を命じられるケースも少なくありません。
3. 管理組合が知っておくべき現実
この制度は、管理不全の部屋を救う強力な手段ですが、理事会が自分たちだけで行うには、あまりにも時間と手間がかかりすぎます。
戸籍の解読や郵送請求の繰り返しに数ヶ月を要する
専門的な「調査報告書(探索報告書)」の作成が必要
まとめ
「所有者不明専有部分管理人」の制度を規約に盛り込むことは、マンションの未来を守るために必須です。しかし、いざ実行に移す際には、多額の予納金と、専門家(弁護士や司法書士)による数ヶ月にわたる調査が必要になることを覚悟しておく必要があります。
まずは、「本当に所在がわからないのか」の初期調査をどこまで組合で行うか、あらかじめ方針を決めておくことが重要です。
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